Bo sport by HEADS owner's essay

004 | 徒然なるままに。:歪んだサーファー

WIPE OUT

僕はいま、1ラウンドを終えて海を眺めている。
メジャーではないビーチブレイクのポイント。
20人ほどのサーファーが週末のサーフィンを楽しんでいる。
波のサイズは腰。
オフショア、Glassy Menpita。

すると、一緒にきた友達が海から上がってきた。
何やら浮かぬ顔。
天気も悪くないし、波も満足できる。サーファーもそれほど多くない。
事情を聞くと、彼が乗ったレフトの波に反対方向からライトに向かって
女の子が向かってきたという。
このまま行くと正面衝突。友達はプルアウトしたという。

そしたら、やおらその女性ロングボーダーが
「あぶねーじゃねーかよっ!わざとでしょ!」
と意味不明な暴言を吐いたという。

ぼくはその女性を最初からマークしていた。いい意味でも悪い意味でも。
彼女はかわいらしい顔立ちで、ハワイブランドの派手なデザインの
パフォーマンスボードを持って現れた。
ノーズライドを決め、フィニッシュにはボードを波に当て込んでいた。

友達はレフトの波をひとりで乗ったので、後からテイクオフして
グーフィー方向から自分に向かってきた彼女を最初から確認していた。
彼の性格上、その場でもめ事をするタチではないので、
パドルアウトしてから彼女に謝ったという。
それでも彼女はASPのコンテストルールまで持ち込んで、噛み付いてきたという。

ビーチブレイクでは、明確に波のピークを判断できない場合が多々ある。
それにここのビーチはルール上のトラブルがあっても、ASPのルールを持ち込むような
ハードコアなポイントではない。
力のないビーチブレイクでビギナーも楽しめるメローなポイントなのである。

コンテストをやりにきているのではなく、サーフィンを楽しみにきているのである。
しかも意味不明な言いがかり。自分が良くても、悪くても、そんな時はお互いに片手を上げて
「すみません」ってニコってすればいいんじゃないの?
そうすれば見知らぬ同士だけどいいリズムができて、サーフィンを楽しむことができると思う。

そんな話をしていると、女房が海から上がってきた。
今度はビギナーのカップルがインサイドで練習をしているところに、
話題の女性ロングボーダーが波に乗ってきたそうだ。
接触はしなかったが、カップルの男性が気を使って女性ロングボーダーに謝ったという。

そしたらその女性の口から出た言葉が、
「危ないからもっと向こうでやんなさいよっ!!」
だったという。

彼女は、いままでどんな風にサーフィンにふれてきたのだろう。
彼女は、いままでどんな人にサーフィンを教えてもらったのだろう。

そう考えると、僕は哀れみの気持ちさえ持ちはじめてしまった。
そしてその瞬間、僕は思い出してしまった。
彼女が波にテイクオフしようとしている表情を。
その顔は、彼女の笑顔とは裏腹に般若のような鬼の形相だった. . .

「サーフィンはT.P.O.を考えて。」